気がついたら、アイデアを出そうとうんうん唸っている最中に髪を抜かなくなっていた。いつごろからかしら?8月に入って、新しいZINEの原稿を考え始めたころにはすでにそうなっていた気がする(それまでは、はたと足元のゴミ箱を見て、山盛りになっている髪の毛を見て「ああ、またやってしまった……」と落ち込む瞬間が定期的にあったのだけど、今年の夏はそれをした覚えがない)
だいぶ伸びた髪の毛の毛先に触れて「わ〜ゴワゴワ」と思って、おそらくこれまではそのまましばらく触っているうちにプッと抜いていたのだけど、弄び続けることなくパッと髪から手を離した自分に、「あれれそういや最近抜いてないな」と思ったのだった。
こんなふうに、「そうしよう」と意識してないのに気がついたら望む状態に近づいていた、という変化は、無理に力をかけてそっちへ引っ張っていった結果ではないから、リバウンドや妙な疲れが起こりづらくて、なんだかホッとしてうれしい。
髪を抜くのは、それが自分に定着してから30年以上たつ付き合いで、最初期からそれがいい関係でないことは分かりきっていたけど、どんなに工夫や意識をしても止められなかったのだった。止める未来がまったく想像つかなかった。
別れは「それをすることを忘れていた」ような感じで訪れるのかもしれないな、と、この年になっても知らないことはたくさんあるなあ、としみじみする秋の昼下がり。