2020年の8月6日は、75年前のこの日のことを語った文章がこれまでの年より多く目に入ってきた気がする。それは私の目が少しずつ、自分の内側だけでなく、外に向こうとしていることの表れかもしれない。世界がとりわけ変わった、というわけではないと思う。前年までがどういう状況だったか、正確に比較しようもないけれども。
ベイルートの事故といい、胸の痛むことが続く。私はどちらの現場にいたわけでもなく、当事者として語ることは何もない。これらのような、言葉を失う凄惨な事態は伴わなくても、地獄としか呼びようのない生活もある。何人の上にも、肉体も精神も明日への信頼も脅かされることのない、平穏と安全が訪れてほしい。いますぐそれが望めない状況のときは、一瞬でも心の慰められる喜びが、闇の一隅を照らしてほしい。