A picture-perfect smile

信号待ちをしている名も知らぬ若い人の前を車で通り過ぎたとき、一人で佇んでいたその人は「なんとなく機嫌がいい」と言うにはくっきりしすぎた笑顔だった。撮影の仕事中のモデルのようだ、と思った。

別に私たちの方に笑いかけたわけではない(窓は閉じていたしスピードを落としてもいない)。ヘアスタイルも着ているものもかけているメガネも、通りすがりに一瞥しただけでも伝わるくらいにはそつのない感じのいいものだったし、普通におしゃれな若い人(この表現を用いるわたしが老けている)、という感じ。

いまの人たちはおしなべてこうなのかな、と想像した。「SNSに掲載した我が身が人から見られる」ことを前提とした立ち居振る舞いが身に染みついているのだとしたら、自分の思うままに(人からどう評価されるかを意に介さずに)振る舞うことは難しくなる一方ではなかろうか。窮屈で当然である。

そんなことを考えるわたしは人目も憚らずニヤニヤしたり眉間にシワを寄せたりしている。もともと笑うことは惜しまない方ではあったが、年をとるにつれ分厚くなる面の皮は、自分を楽にするシールドでもあるのかもしれない。自分が楽なら、他人を多少は受け流しやすくなる。